「18歳の壁」と「20歳前障害基礎年金」の所得制限
2026年04月01日 15:32
「18歳の壁」と「20歳前障害基礎年金」の所得制限──知らないと損する制度のポイント
はじめに──障害のある方とご家族が直面する「制度の壁」
2026年3月27日、上野厚生労働大臣が会見で「18歳の壁」について言及したことが大きな話題となりました。特別支援学校を卒業した後、それまで受けていた福祉サービスが途切れ、夕方以降の居場所がなくなってしまう──。障害のあるお子さんを持つご家族にとって、これは本当に深刻な問題です。
参考記事
URL:https://news.yahoo.co.jp/articles/c9a1fbf551c058ece3d5e608b1ccf4af80fea5b4
同じ記事の中で触れられていたのが、「20歳前障害基礎年金」という制度です。この年金は、保険料を払っていなくても受給できる仕組みですが、同時に「所得制限」という大きな壁も存在します。
私は障害年金専門の社会保険労務士として、日々多くのご相談をいただいています。その中で痛感するのは、「知っているか、知らないか」で、受け取れるお金も、その後の人生設計も大きく変わってしまうということです。
この記事では、専門知識のない方にもわかりやすく、障害福祉サービスと障害年金制度について、大切なポイントを解説していきます。
「18歳の壁」とは何か──特別支援学校卒業後に訪れる現実
「18歳の壁」とは、障害のある子どもが特別支援学校を卒業する18歳前後に、それまで受けていた支援が途切れ、新たな居場所の確保が困難になる問題を指します。
具体的には、以下のような課題があります。
・特別支援学校では放課後も支援があったのに、卒業後の福祉サービスは午後3時台に終わることが多い
・夕方以降の時間を有意義に過ごす場所や活動がない
・親が働いている間、預け先を見つけるのが難しい
・余暇活動や社会参加の機会が極端に減る
学校という枠組みがなくなると、急に「空白の時間」が生まれてしまうのです。親御さんにとっては、仕事を続けることすら難しくなる場合もあります。
国が示した対応策と今後の方向性
上野厚生労働大臣は、この問題に対して以下のような対応を示しています。
【令和6年度に実施済みの施策】
・生活介護の延長支援加算の拡充
・夕方以降の支援に対する評価を強化
【今後期待される取り組み】
・市町村が実施する「日中一時支援」「地域活動支援センター」のさらなる活用
・当事者団体や支援機関の意見を丁寧に聞きながら、今後の報酬改定で改善を検討
制度の改善には時間がかかりますが、現場の声に寄り添った支援体制の充実が期待されています。
「20歳前障害基礎年金」とは──保険料を払っていなくても受給できる制度
記事の中でもう一つ大切なテーマとして取り上げられていた「20歳前障害基礎年金」について解説します。
通常、障害年金を受け取るには国民年金や厚生年金の保険料を納めていることが条件になります。しかし、生まれつきや子どものころから障害がある場合、20歳になる前は保険料を納める義務がありません。
そのため、20歳前から障害があった方に対しては、特別に「20歳前障害基礎年金」という制度が設けられています。この制度では、保険料を納めていなくても、20歳になった時点で障害の程度が一定の基準を満たしていれば、年金を受け取ることができます。
2026年度の障害基礎年金の支給額は以下のとおりです。
・1級:月額約8万8,000円
・2級:月額約7万円
この金額は物価変動に応じて毎年見直されます。
注意すべき「所得制限」──働くと年金が減る?
「20歳前障害基礎年金」には、他の障害年金にはない大きな特徴があります。それが「所得制限」です。
この制度は、保険料を納めていなくても受給できる"福祉的な給付"という性質上、一定以上の収入がある場合には年金額が調整される仕組みになっています。
具体的には、以下のような基準があります。
【所得制限の内容】
・本人の前年所得が約376万円を超えると、年金が半額に減額される
・本人の前年所得が約479万円を超えると、年金が全額停止される
参考
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/shougainenkin/jukyu-yoken/20200805.html
つまり、働いて収入を得られるようになったことは素晴らしいことなのに、「働けば働くほど年金が減るのでは?」という矛盾に直面することになるのです。
障害年金は本来、生活を支えるための大切な収入源です。にもかかわらず、制度の複雑さや情報不足によって、知らない方が非常に多いのです。
特に、就労支援を受けて働き始めた方や、親元を離れて自立を目指している方にとって、この所得制限は大きな不安材料になります。
まずは、収入と所得の違いから見ていきましょう。
例えば、会社勤めをしていて、額面の給与が月額40万円で、そこから社会保険料や所得税・住民税などが差し引かれ、手取り額としては月額32万円をもらっている人の場合で考えてみましょう。
この人の1年間の収入(年収)は480万円(=40万円×12か月)です。手取り額は384万円(=32万円×12か月)です。(賞与は考慮していません。)
一方、所得とは、収入額や手取り額ではなく、収入から必要経費を差し引いた後の額を指します。
例えば、先ほどの1年間の収入が480万円の人の場合、収入から給与所得控除(=必要経費に相当)の140万円を差し引いた340万円が給与所得となります。(給与所得控除の額は給与額に応じ決められています。)
会社などから給与をもらっている人は年末に源泉徴収票をもらいますが、源泉徴収票の「支払金額」ではなく「給与所得控除後の金額」の欄が給与所得になります。
収入が給与だけの人の場合は、この給与所得が所得制限の対象となる金額です。
収入は480万円、手取り額は384万円ですが、所得は340万円です。この人が独身者だった場合、障害基礎年金の2分の1が支給停止となる所得額の376万円を下回っていますので、支給停止にはならず、障害基礎年金の全額が支給されることになります。
【ケース1】働かずに障害年金だけを受給する場合
・障害基礎年金2級:年間約84万円(月約7万円)
【ケース2】年収480万円で働き、年金を満額受給
・給与収入:480万円
・障害基礎年金2級:年間約84万円
・合計:約564万円
【ケース3】年収600万円で働き、年金が全額停止
・給与収入:600万円
・障害基礎年金2級(全額停止)
・合計:約600万円
これはあくまで「金銭面」だけの話です。実際には、働くことで体調を崩してしまったり、生活リズムが乱れたりするリスクもあります。一人ひとりの状況に合わせて、慎重に判断することが大切です。
障害年金の申請で知っておくべきこと──専門家に相談する意味
障害年金の制度は非常に複雑で、書類の準備も簡単ではありません。特に「20歳前障害基礎年金」の場合、以下のようなポイントを押さえる必要があります。
・初診日の証明
・障害認定日の確認
・診断書の内容と障害等級の関係
・所得制限の計算方法
・更新時の注意点
これらを自分だけで正確に理解し、書類を揃えるのは、とても大変です。実際、書類の不備や制度の理解不足によって、本来受け取れるはずの年金が受け取れないケースも少なくありません。
私たち障害年金専門の社会保険労務士は、こうした複雑な手続きをサポートし、一人ひとりの状況に合わせた最適なアドバイスを提供しています。
「制度を知ること」が、家族の安心につながる
障害のある方やそのご家族が直面する課題は、一つではありません。
「18歳の壁」のような福祉サービスの問題、「20歳前障害基礎年金」のような経済的支援の問題、そして就労や自立に関する問題──。それぞれが複雑に絡み合っています。
だからこそ、「制度を正しく知ること」が、何よりも大切です。
知らなければ、受け取れるはずの支援も受け取れません。知っていれば、選択肢が広がり、将来への不安も少しずつ軽くなっていきます。
もし今、あなたやあなたの大切な家族が、障害年金や福祉制度について「よくわからない」「どうしたらいいかわからない」と感じているなら、どうか一人で抱え込まないでください。
専門家に相談することで、見えてくる道があります。
まとめ──今、知っておくべきこと
この記事でお伝えしたポイントをまとめます。
・「18歳の壁」は、特別支援学校卒業後の居場所確保が困難になる問題
・国は「生活介護の延長支援加算」などの対策を進めている
・「20歳前障害基礎年金」は保険料未納でも受給可能だが、所得制限がある
・所得376万円超で半額、479万円超で全額停止
・制度は複雑なので、専門家に相談することが安心への第一歩
障害年金は、生活を支える大切な権利です。正しく理解し、しっかりと活用していきましょう。
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